近代日本人の食べ物の嗜好は大きく変化し、魚類の分野では生食用サーモンの人気が一段と高まりました。現在では、その多くが養殖によって生産されたものが中心となっています。
世界的にみると、魚類養殖の歴史は古く、紀元前11世紀の古代中国(殷代末期)の記録が最古のものとされ、当時はコイが育てられていました。このことは2019年(令和元年)に日本人を含む国際研究チームによる遺跡の発掘調査で、事実であったことが証明されています。
ヨーロッパでも古代ローマ時代にウツボやウナギ、カキなどが養殖されていました。
今回は人気のサーモンについて『養殖』の観点からご紹介していきます。
① 日本での火付け役…外国産の養殖サーモン
アトランティックサーモン(ノルウェー・チリ・カナダ等で生産)
アトランティックサーモン(大西洋の鮭)は、本来、孵化後の数年を河川で過ごした後に海に下り、産卵のために母川に帰るという日本でおなじみの鮭(太平洋の鮭)の生態と同じです。
北欧のノルウェー王国では、1959年(昭和40年)にトラウト(ニジマス)の海面養殖を開始し、1970年(昭和45年)からはアトランティックサーモンの養殖事業を『ジャパンプロジェクト(国策)』として本格化させました。
この後、養殖環境等に関する厳しい基準を作り、基準をクリアしたものだけに与えるノルディックサーモンというブランドを確立させ、世界中に輸出しています。
現在、日本で輸入されるアトランティックサーモンの約70%がノルウェー産のものです。
トラウトサーモンとは、淡水魚のニジマス(トラウト)を海水や淡水で養殖して生産した商品名のことを指しますので、実際にはトラウトサーモンという種は存在しません。
また、ニジマスの原産地は北半球ですので、長い間、南半球での養殖生産は叶いませんでした。
1980年(昭和55年)ごろから南米のチリに多額の海外資本が入り(日本企業も参加しています)、技術的な革新の下、本格的な養殖事業が始まりました。
現在では、ノルウェー産に比べて安価であることなどから養殖事業は急成長を遂げ、世界中で消費される量をノルウェーと折半するほどにまでになりましたが、チリ産のものは養殖時に使用されている薬品や環境汚染等の面で、問題を指摘されているのも事実です。
この2つのサーモンは、スーパーの刺身コーナーに行けば必ず見かけるようになり、脂身がたっぷりで、身近なものでは回転寿司のネタや、居酒屋の刺身盛り合わせの定番にまでなっています。
また、味だけにとどまらずEPAやDHAに代表されるオメガ3脂肪酸を多く含み、体にも良いことが人気をさらに後押ししています。各栄養素の効能は『あじの干物』のページをご参照ください。
② データで見るサーモンの人気度
少し古い資料にはなりますが、第198回通常国会に提出された資料の一部です。
年代を問わず75%以上が「サーモンは好き」と回答しており、人気の高さが一目瞭然ですね。
また、大手回転寿司チェーン店の最新調査でも、『好きなタネ・最初に食べるタネ・最後に食べるタネ』の3部門で、堂々の一位がやはりサーモンという結果です!
では、いつごろからサーモンの人気が高まってきたのでしょうか?
それは、ノルウェー産のアトランティックサーモンが、1986年(昭和61年)ごろから輸入され始めたのがきっかけでした。
養殖されたサーモンは、アニサキス等の寄生虫に感染するリスクがほとんどないため、安心して生で食べられるようになりました。このことが、爆発的ブームを起こすきっかけとなったのです。
③ 日本における養殖サーモンの歴史
日本における内水面養殖(淡水養殖)は、1877年(明治10年)にニジマスの卵10,000粒がアメリカから寄贈され、東京の養殖池で孵化・飼育したのが始まりとされています。
1926年(大正15年)『水産増殖奨励規則』の公布を契機に、全国の都道府県に孵化場や養殖場ができ、ニジマスの内水面養殖は盛んになり、現在に至っています。
また、海面養殖(海水養殖)については1963年(昭和38年)に広島県で、64年には静岡県でニジマスを海に入れての試験が始まりましたが、共に企業化には至らず終了しました。
この後、試行錯誤を繰り返しながら今日に至っており、現在では内水面養殖と合わせてブランドサーモン(ご当地サーモン)の養殖が全国各地で行われています。
④ ショップの【生食用サーモン】をご家庭で!

ショップでは、近隣から取り寄せた国内ブランドサーモン(富士山サーモン、信州サーモン、アルプスサーモン)とノルディックサーモン、アトランティックサーモンを取り扱っております。
いずれも 厚生労働省の推奨を上回る『-40℃以下(その他のお魚は-30℃以下)で24時間以上冷凍』してから発送いたしますので、寄生虫による食中毒の心配はございません。
これらの生食用サーモンをご賞味いただけましたら幸いです(^^;;